2-2. 不動産所得の記入方法

不動産所得の種類

不動産所得とは、不動産・不動産の上に存する権利などの貸付による所得です。

具体的には、次のようなものが不動産所得となります。

 

不動産所得に含まれるもの

①土地の貸付による地代・更新料・名義書換料など。
②建物・アパートなどの貸付による家賃・権利金・礼金・更新料及び敷金・保証金で返却しない部分の金額。

建物を他人に貸す場合は、契約時に保証金や敷金を受け取りますが、この保証金や敷金は、将来借主に返却する「預り金」ですので、収入金額に含めません。また賃貸契約解約の際、保証金や敷金を返却した場合は必要経費に含めません。ただし、保証金や敷金のうち、返却しない部分については収入金額に含めます。

③広告などのため土地や建物の一部(屋上、塀や壁など)を利用させる場合に受け取る使用料。
④自動車の駐車場として建物や空き地などを一定期間貸し付ける場合に受け取る使用料。ただし、自動車を預かる有料駐車場や有料自転車置場のように、他人の物を保管する場合は、事業所得または雑所得になります。

 

不動産所得

 

不動産所得額の計算方法

不動産所得の金額は、下の式で計算します。

不動産所得=総収入金額−必要経費

 

総収入金額とは、本年中に家賃の支払期日(契約などに定められた支払日)がきているなど収入になることの確定した金額です。

したがって、実際に受け取っていない場合でも、支払期日が本年中に到来したものは本年分の収入金額とします。

また、本年中に収入になることが確定した金額のうち、翌年以降の期間に対応する分が含まれている場合でも、その全額が本年分の収入金額になります。

 

①収入金額の計算方法

収入金額の計上時期は、原則として下の表のとおりです。

 

区分 収入計上時期
契約又は慣習により賃貸料の支払日が定められているもの その支払い日
賃貸料の支払日が定められていないもの その支払いを受けた日
賃貸料の請求があった時に支払うこととされているもの その請求日
礼金、名義書換料、更新料など 契約日
保証金、敷金で貸付期間の経過に関係なく返還しないもの 契約日または引渡日
保証金、敷金で貸付期間に応じて返還を要さないこととなるもの その返還を要さないこととなる日
保証金、敷金で貸付期間が終らなければ返還するかどうか確定しないもの 貸付終了日

 

②賃貸用不動産が共有の場合

賃貸用不動産を共有している場合は、収入と経費を各人の持分割合によって按分し、それぞれの不動産所得として確定申告を行います。

 

③不動産所得の必要経費

不動産所得の必要経費は、事業所得について認められているものとほぼ同じです。
不動産所得で気をつけたい経費としては次のものがあります。

 

 

不動産所得の経費になるもの

1)立退料
2)借入金の利子
3)修繕費
4)固定資産の損失
5)青色申告特別控除

 

1)立退料

立退料の取り扱いは、下の表の通りです。

 

区分 取扱
貸し付けていた建物の賃借人を立退かせるための立退料 不動産所得の必要経費
土地・建物の取得に際して支払う立退料 土地・建物の取得費
土地・建物の譲渡に際して支払う立退料 譲渡所得の譲渡費用

 

2)借入金の利子

不動産業を営んでいる者がその業務用資産を取得するために借入れた借入金の利子は、必要経費に算入します。
不動産業を営んでいなかった者がはじめてその貸付用資産を購入するために借入れた借入金の利子のうち、その賃貸業務を開始する前の期間に対応する部分はその貸付資産の取得価額に算入します。
業務開始後の期間の利子は、必要経費に算入します。

 

ただし、不動産所得が赤字になる場合、借入金の利子のうち、土地の取得のために要した部分については、必要経費に算入されません。

 

3)修繕費

貸付用建物の修理、改良などのために支出した金額のうち、通常の維持管理のため、またはその原状回復のために要した金額などは修繕費として必要経費に算入できます。
具体的には、壁の塗装、畳の取替え、トイレ修理などです。
ただし、その建物の価値を増加させるような支出は、資本的支出として減価償却をしなければなりません。
具体的には、避難階段の取付け、用途変更のための改造などです。
もし、資本的支出の金額が20万円未満の場合は修繕費として必要経費にします。
資本的支出か修繕費か不明の場合は、次の基準のどちらかにあてはめて、修繕費として必要経費にします。

 

修繕費の対象になるもの
イ)その金額が60万円未満のもの
ロ)その金額が修理対象資産の前年末取得価額の10%以下のもの

 

4)固定資産の損失

貸付用資産が取り壊したり、災害などにより滅失した場合は次の金額を固定資産の損失として必要経費に算入できます。

 

区分 取扱
その不動産業が事業的規模である場合 その損失額の全額
その不動産業が事業的規模に満たない場合 その不動産所得の黒字の金額を限度

 

5)青色申告特別控除

青色申告者は不動産所得から青色申告特別控除を差し引くことができます。
不動産所得の青色申告特別控除については、令和2年分から改正されています。2-1.事業所得の記入方法の2ページ「青色申告特別控除フローチャート」を参照してください。
または、ほかに事業所得を有しておりその事業所得が65万円控除の要件を満たしている場合に不動産所得から65万円控除を差し引きます。
その不動産業が事業的規模に満たない場合の青色申告特別控除額は10万円です。

 

事業的規模の要件

不動産の貸付が事業的規模に該当するかどうかの判定は次の通りです。
① 貸間・アパート等の場合、独立した室数がおおむね10室以上であること。
② 独立した家屋の貸付が、おおむね5棟以上であること。