国と地方の使い分け
企業向けの助成金・補助金は、国(経済産業省、厚生労働省、国土交通省、環境省ほか)が行うものと地方自治体(都道府県、市町村、第3セクターなど)が行うものと、それぞれがあります。実際には、中小企業・小規模事業者の振興を目的とした施策だけをとっても、両者が必ずしもきちんと役割分担されているとはいえず、重複した内容のものも少なくありません。一般には非常に分かりにくい構造になっています。
それでも、国と地方の施策の関係を整理すると、大きく次の3つに表すことができます(図は平成26年度中小企業白書第4-1-11図を参照)。
(1)ホップ・ステップ・ジャンプ型
企業規模や成長段階に応じて、地方から国へ役割が変わる形。徐々に規模が大きい(成長段階に見合った)施策を利用していくことが想定されます。
規模の大きな助成金・補助金は準備やその後の事業報告などにも手間がかかりますので、小さい企業がいきなり利用することはちょっと難しい場合があります。補助金の「下限」が設けられていることもあり、下手に手を出すとかえってリスクを抱える事にもなりかねません。その場合、地方自治体による、同種の規模の小さな補助金を利用するほうが身の丈が合っているといえるでしょう。
ここ数年話題になっている「ものづくり補助金」は国の制度ですが、こうした小規模な企業も対象とした施策は、地方自治体が従来から講じてきた製造業向け施策とどうしても重複感がでてしまいます。その場合、同じ対象事業についてはどれか一つの補助・助成しか受けられないのが普通です。例えば東京都の「新製品・新技術開発助成事業」はものづくり補助金等同時期に、対象も補助上限も似たような形で行われました。併願は可能である一方、もし両方共採択された場合はどちらかを辞退しなければなりません。
(2)棲み分け型
支援対象を地方と国で役割を分ける形。これも国の施策と地方の施策とで重複してしまう部分もありますが、目的によっては地方の助成金・補助金のほうがより役立つことがあります。
例えば販路開拓に係る補助金の場合、市区町村内での販路開拓、都道府県範囲での販路開拓、国による全国での販路開拓、など、補助金の主体者によって力点が異なってきます。若年労動者雇用の支援策などでも、例えば地元在住者の雇用を主として考えているか、とにかく全国から人材を見つけ出したいかで、地方の施策と国の施策の使い分けが生じてくるでしょう。
国と都道府県が同じ対象もしくは同じ事業を支援する形。国が地方自治体に資金を交付して間接的に負担金を分担するものもあれば、地方が独自に国の支援策を補完する形で設けるものもあります。“ホップ・ステップ・ジャンプ型”や“棲み分け型”の場合は、一般に重複して助成金・補助金を受けることができませんが、一体支援の場合は、例えば国の施策を受けた後にさらに自己負担分を地方が補助するとか、助成金の額を上乗せするといった形がみられます。
ごく一例ですが、東京都の「正規雇用転換促進助成金」(東京都正規雇用転換促進助成金)は、厚生労働省のキャリアアップ助成金(正規雇用等転換コース)(非正規雇用労働者を安定雇用へ転換)に上乗せする形で設けられた制度です。