排反案からの選択問題を理解する
2015年06月19日
損得学のススメ(10)です。前回に引き続き、「排反案(はいはんあん)」からの選択問題を解説します。
まずは、「排反案」の意味やこれまで説明してきた損得判断の基本原則との違いから振り返ってみます。
排反とは、確率・統計でいうところの排反事象と同じ意味です。
例えば、「明日は晴れ」、「明日は雨」、これらの事象は互いに排反の関係にあります。つまり、2つ以上のことが同時に起こらない、または一方の状態が起これば、他の状態は起こりえない場合を排反としています。
これまで、損得判断の基本原則について、次のように説明してきました。
ここまでの例題では、「どの案を選ぶのが経済的に一番有利か」という問いが多かったと思います。これは、損得判断においては、まず、代替案の相互関係を押さえる必要があるからに他なりません。
だからといって、必ずしも上記のように2案の収益・費用だけで比較できる場合ばかりではありません。そうでない場合は、別の方法で損得判断をする必要があります。
例えば、ある前提をもとに様々なバリエーションが複数あって、この中から一つだけを選ぶケース、こんな時には排反案の考え方が、大いに手助けとなります。
さて、前置きはこの程度にして、2つの例題から排反案への理解をさらに深めていましょう。
【例題1】
前回(例題2)からの続きです。
とある観光地にドーナツショップを開店した場合、事前のリサーチでは店員の数によって売上や原価に違いが生じることがわかっており、以下の粗利が見込まれています。
さて、以下の4案からどの案を選択する(店員を何人雇う)と一番経済的に有利な選択になりますか。なお、店員一人あたりの人件費を20万円とします。
粗利から、追加効率、人件費を差し引いた正味利益は次のとおりです。
【考え方】
前回と同様に追加効率のグラフから考えてみます。
グラフを書いてみると、原点から出発して各案の粗利額を結んだ折れ線の傾きは、それぞれ店員を1人増やす場合の追加効率(追加による生産性の増減)を示していることがわかります。すると、追加効率(差の案)で見ると、○の部分、案1と案3がへこんでいる所が気になります。
それぞれの案の優劣は、各案の傾きと人件費との傾きの比較で判定します。
ここで、案1に案2、案3に案4の前提を借置きして、点線のように補正してみると明らかに案1、案3の傾きが減少していることがわかります。つまり、1人雇うより2人雇った方が得で、2人雇うより3人雇う方が損だということが明らかになります。
このような場合、損得学においては、案1と案3を経済的には「無資格案」にあるとして、意思決定の比較から外してしまいます。
ちなみに、この例題の答えは、案2です。
表の正味利益の金額とグラフを見ていただくと、粗利の傾きが人件費の傾きより大きい状態から小さい状態に変わる境目(案2)のところで正味利益(粗利から人件費を差し引いた利益)が最大になることがお分かりいただけると思います。
無資格案について、もう一つ例題をお出します。