所得税は0円でも医療費控除をした方がいいワケ
2016年01月25日
前回は医療費控除の基本的な注意点についてご紹介しました。
今回は前回紹介しきれなかった、さらに一歩ふみこんだ内容をご紹介します。
住宅ローン控除で所得税が0円になったからと言って安心してはダメ!
住宅ローンの年末残高に一定率をかけた金額を所得税から控除してくれる住宅ローン控除制度。
控除額が大きいため、所得税を全額控除してくれて所得税が0円になったという人も多いと思います。
でも、所得税が0円になったから医療費控除はもういいか、と思わないでください。
実際、「あれ?所得税は0円だったけど、住民税はかかるんだなあ」と思った経験はありませんか?
所得税と住民税では税額の計算方法が異なるため、このようなことが起こるのです。
医療費控除の控除額があるのであれば、面倒がらずにきちんと申告しましょう。
なぜ所得税が0円なのに住民税が0円にならないのか
まず、所得税と住民税の違いを簡単にご説明しましょう。
①所得税と住民税では税率が違う
所得税は所得に応じて税率も変わる超過累進税率を採用しています。
所得税の速算表
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4.000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
(国税庁HPより)
一方、個人住民税の所得割は一律10%です。
課税所得金額が195万円以下の人なら所得税率は5%、住民税は10%ですから、税率が倍違います。
②所得金額から差し引かれる所得控除額も所得税と住民税では異なる
社会保険料控除や医療費控除など所得控除額が同額のものもありますが、ほとんどの所得控除額は住民税の方が所得税より少ないのです。
そんななか、医療費控除が所得税と住民税で同額であることは前回コラムで説明しました。こう言われるとお得感ありませんか。
(所得税と住民税での所得控除額の違いの一例)
所得税 | 住民税 | |
基礎控除 | 38万円 | 33万円 |
配偶者控除(一般) | 38万円 | 33万円 |
生命保険料控除(上限) | 12万円 | 7万円 |
③住宅ローン控除で所得税が0円になった人
言い換えれば住宅ローンがなければ所得税が0円にならない人ですから、課税所得金額(税率をかける前の金額)は発生している人です。
所得控除額は前述のとおり、住民税の方が少ない額しか控除してくれないうえに、しっかり10%住民税がかかってきます。
④住宅ローン控除も違う
このようにして算出した住民税から住宅ローン控除を控除するわけですが、住宅ローン控除は所得税と住民税では控除される額が全然違います。
住民税での住宅ローン控除額は基本的には「所得税で控除しきれなかった金額」なのです。しかも控除額には限度額があります。
詳細は総務省HP↓
(http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/090929.html)
これらの理由により、所得税は0円なのに住民税の所得割は0円にはならない現象が起こるのです。
もちろん、そもそも所得が少なくて医療費控除が無駄に終わるケースもありますが、申告して税金が高くなることはないので、安心してください。