従業員の健康管理は会社の役目
2016年04月06日
今年も早いものでもう4月です。新入社員の方が入社される会社も多いのではないでしょうか。
新たに従業員になる方の多い時期ですので、既にご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、今回は労働安全衛生法により定められている健康診断について改めてご説明いたします。
自社の従業員が健康で働き続けることができるためには、会社が従業員の健康状態を把握し、適切な健康管理をすることが不可欠です。
職場における健康診断については、一般健康診断と特殊健康診断に大きく分けられますが、ここでは一般健康診断について説明していきます。
◆雇入れ時の健康診断
常時雇用する従業員(※)を雇い入れる際、実施します。従業員の適正配置、入社後の健康管理の基礎資料となります。
検査診断項目は次のとおりです。
1.既往歴及び業務歴の調査 2.自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3.身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査 4.胸部エックス線検査
5.血圧の測定 6.貧血検査
7.肝機能検査 8.血中脂質検査
9.血糖検査 10.尿検査
11.心電図検査
尚、この健康診断で省略できる項目はありませんが、入社前3ヶ月以内に医師による健康診断を受けた従業員がその結果を証明する書面を提出したときは、その健康診断項目については省略することができます。したがって、入社時に健康診断書を提出してもらっている会社では、その項目については雇入れ時の健康診断を省略できることになります。
◆定期健康診断
常時雇用する従業員(※)に対し、1年以内ごとに1回、定期に実施します。検査項目は雇入れ時の健康診断の各項目及び喀痰検査です。
なお、以下の省略基準のとおり、検査項目の一部は、医師の判断により省略できます。
また、雇入れ時健康診断を実施した日から1年間は、雇入れ時健康診断での項目については省略することができます。
<省略基準>
項 目 | 省略することができる者 |
身長の検査 | 20歳以上の者 |
腹囲の検査 | 1.40歳未満の者(35歳の者を除く)
2.妊娠中の女性その他の者であって、その腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと判断された者 3.BMIが20未満である者 4.自ら腹囲を測定し、その値を申告した者 |
胸部エックス線検査 | 40歳未満の者(20歳、25歳、30歳及び35歳の者を除く)で、次のいずれにも該当しない者
1.学校、病院、社会福祉施設等において業務に従事する者 2.常時粉じん作業に従事し、じん肺管理区分が管理1の労働者又は常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事している者のうち、じん肺管理区分が管理2である労働者 |
喀痰検査 | 1.胸部エックス線検査によって病変の発見されない者
2.胸部エックス線検査によって結核発病のおそれがないと診断された者 3.胸部エックス線検査の項の右欄に掲げる者 |
貧血検査、肝機能検査、
血中脂質検査、血糖検査、心電図検査 |
40歳未満の者(35歳の者を除く) |
※「常時使用する従業員」とは、次のいずれにも該当する従業員をいいます。
1.期間の定めのない労働契約により使用される者、契約期間が1年以上の労働契約により使用される者、契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者。
2.1週間の労働時間数がその会社の同種の業務に従事する通常の従業員の1週間の所定労働時間数の4分の3以上である者。
尚、上記2に該当しない場合でも、上記1に該当し、1週間の所定労働時間数が同種の業務に従事する通常の従業員の概ね2分の1以上である場合には一般健康診断を実施することが望まれます。
◆特定業務従事者の健康診断
特定業務に常時従事する従業員に対し、その業務への配置替えの際及び6ヶ月以内ごとに1回、定期に実施します。検査項目は定期健康診断と同じで、一部の検査項目は医師の判断により省略できます。
省略基準は、胸部エックス線検査を除き、定期健康診断と同じです。
上記の他、一般健康診断として、海外派遣労働者の健康診断、給食従事者の検便があります。
尚、健康診断を行った後は、健康診断個人票を作成し、5年間保存することが必要です。
更に、常時50人以上の従業員がいる会社の場合には、健康診断結果報告書(定期のものに限る)の管轄労働基準監督署への提出が義務づけられています。
今回ご説明した労働安全衛生法に規定されている健康診断は、法律により会社に対して実施が義務づけられているものですので、健康診断の費用は会社が全額負担するものであり、会社の経営状況によっては負担に感じるかもしれません。
しかし、近年では健康診断において脳・心臓疾患に関連する所見をはじめとして、何らかの所見を有する従業員が年々増加傾向にあるそうです。
したがって、健康診断をきちんと行い、結果を従業員に通知して健康管理の重要性を理解してもらうとともに、会社はその結果に基づき医師等の意見を聴き、就業場所の変更や作業の転換、労働時間の短縮、休業等の就業上の措置を行うことが重要となっていきます。