運転資金の肥大化を防ぐ
2014年09月29日
運転資金とはどんな資金?
前回では、社長がやるべき仕事として「資金繰り」が大切だとお話しました。それは、「資金繰り表」をしっかりチェックすることに加えて「貸し倒れ対策」を徹底すること、「運転資金の肥大化」を防止することだと説明しました。
今回は、そもそも運転資金とは何かということをお話しした上で、運転資金肥大化の問題点を明らかし、結論にむかっていきます。
運転資金とはどんな資金でしょう。運転資金を計算で求める式がありますので、まず見てください。
運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 − 仕入債務
売上債権とは売掛金と受取手形、棚卸資産とは製造業なら原材料、仕掛品、製品在庫、卸業や小売業では商品です。そして仕入債務は買掛金と支払手形です。
この2つの資産と1つの負債には共通の性格があります。それは資金(現金)に変換されるまでに時間がかかるという性格です。
仮に現金取引だけの会社であれば売上債権は存在しませんね。商品も仕入れるそばから売れてしまえば棚卸資産はゼロ、仕入債務も現金取引ならゼロになります。その場合、運転資金もゼロ、必要ありません。
しかし一般に多くの会社は、製商品を掛けで売り上げます。資金(現金)として回収できるのは30日とか60日といった売掛金サイトが経過してからです。製品は生産に時間がかかりますし完成しても直ちに売れるとは限りません。もちろん商品も仕入れてから完売するまでには時間がかかります。原材料や商品の仕入も同様に掛けで買っていれば数十日後の支払いになります。
さて、会社を運営していくうえでの資金(原材料や商品の仕入、社員への人件費、事務所や工場にかかる費用、等々)は何で賄いますか?
事業を始める時は元手としての資本金でしょう。では事業を開始した後はどうですか。当然、製品や商品の売上でその後の資金を賄うことになりますね。ところが製商品は掛けで売り上げていますから、すぐには資金が手元に入ってきません。しかし事業を継続するにはすぐに使える資金が必要です。掛けで仕入れる物については支払いが猶予されていますが、現金で支払わなければならないものもたくさんあります。そこで、売上が手元に回収されるまでの「つなぎ資金」が必要ということになります。これが「運転資金」です。もう一度先ほどの式を見てください。
運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 − 仕入債務
まだ資金(現金)化されていない売上債権と棚卸資産の合計から、すぐに支払わなくてよい仕入債務を引いた額が、その会社が必要とする「つなぎ資金」、すなわち「運転資金」です。通常は会社のメイン銀行からの短期融資(短期借入金)で手当します。
運転資金はつなぎの資金です。従って売上が現金化されれば短期で返済されるものです。もちろん事業が継続する以上、常につなぎ資金は必要となっていますから、理論的には毎年ほぼ同額の短期融資が繰り返されることになります。従ってこのような運転資金を「経常運転資金」と言います。
健全な経営を続ける会社の経常運転資金は、基本的に大きく変動することはありませんし、そのための短期借入金の規模もさほど大きく変動しません。
もちろん、運転資金が増えることもあります。増えること自体は必ずしも悪いことではありません。問題は増える/増えた理由です。増える理由はいくつか考えられます。例えば業績好調で事業規模が拡大した場合などは、当然運転資金も必要額が増えます。しかしこれは悪いことではありません。こういった業績拡大に伴う運転資金を「増加運転資金」と言います。