50万円値引いても受注した方が得?

2014年10月06日

前回分から読む

 

前回は、「損得学」の入口ということで、コピー用紙を購入する例題から「損得判断の基本原則」を解説しました。
今回も引き続き、損得判断の基本原則と会計思考とのギャップについて考えてみますので、お付き合いください。

 

【例題】
凸凹テック営業部のウラノ君は、これまでの経験上、自社の主力製品の売価を製品1kgあたり最低3万円と考えていました。
ある日、顧客からこの製品100㎏を250万円で1か月後に納品できないかと特別な注文がありました。サカイ工場長に確認したところ、設備と人手には余裕があり、残業しなくとも納期までに生産できるので問題ないとのことでした。しかし、ウラノ君は、製品1kgあたり2.5万円なので割に合わないと考え、この特別注文を断ってしまいました。
後刻、報告を受けたハラシマ営業部長は、頭を抱えてしまいました。ナゼでしょう?
(ちなみに、費用は、原材料費100万円、機械にかかる光熱費30万円、人件費や雑費その他20万円で合計150万円かかります)

 

【考え方】
前回と同様に、損得判断の基本原則に当てはめてみます。
◎ 第1原則 ⇒ 比較の対象を明確にする
 「注文を受ける場合」と「断る場合」の比較
◎ 第2原則 ⇒ 比較の対象の間で、お金の流れに着目して収益の違いと費用の違いをそれぞれ総額でとらえる
 <収益の違い> 受ける場合250万円、断る場合0円 相違分250万円
 <費用の違い> 受ける場合150万円、断る場合0円 相違分150万円
 <利益の違い> 受ける場合100万円、断る場合0円 相違分100万円

 

ハラシマ部長が頭を抱えてしまった理由について、解っていただけましたでしょうか。
このような「暇な状態(=手余り)」においては、ヤスノ君の意思決定は、100万円の利益を獲得するチャンスを逃してしまうからです。

 

見方を変えて、「忙しい状態(=手不足)」だったらどうなるでしょう。

 中小企業診断士 アンドウ・ユタカ 執筆者紹介

 中小企業診断士 アンドウ・ユタカ

資金調達や財務分析に長年取り組んできた経験を生かし、「経営で生じた会計・ファイナンスの疑問点をシンプルにわかりやすく解説すること」をモットーに、企業内診断士として活動しています。

アンドウ・ユタカ先生のコラム一覧へ≫