検索結果からのプライバシー情報削除
2014年10月16日
10月9日、東京地方裁判所で米国グーグル社に対し、ある日本人男性が犯罪に関与しているかのような記事の検索結果を削除するようグーグルに命じる仮処分決定をしました。
もともと、グーグル社は「Removal Request」と呼ばれる削除申請ツールを設置しており、誰でもこのフォームを通じて、検索結果からの削除申請をすることが可能です。しかし、このツールが効果を発揮するのは、元記事が既に削除されており、グーグルの検索結果にキャッシュが残っているときだけのことです。
では、元記事が削除されていない場合、それがどんなに違法性の高い記事であっても削除はできないのかというと、それもそうではなく、従来から「法的問題の報告」というフォームがあり、ここから申請することにより、違法な記事の検索結果からの除外は可能でした。
ではなぜ今回の件が裁判にまでなったかというと、上記の各ツールは、機械的に処理されるものではなく、申請の内容を見てグーグルの担当者の判断で削除するかしないか決定される運用になっており、日本の法律に基づいて違法なものは全て消されるという保証はありません。また、実際に、違法性の高いことが明らかな記事でも、グーグル社の担当者の判断では違法ではないとされることも多いというのが実情で、IT弁護士の間では、グーグルに対して裁判で検索結果の削除を命じさせることは悲願の一つでもありました。
今回の決定は、元記事をひとつひとつ削除しなくても、グーグルに対して仮処分命令を得れば違法性のある記事が検索エンジンを通じて流通しなくなりますので、違法な記事により被害を受けている人にとっては、1回の裁判で済み、非常に効率が良いようにも思われそうです。
しかし、実際の手続きを考えると、グーグル社は米国法人ですから、米国のグーグル社に対する裁判を起こす必要があり、そのため仮処分命令申立書は和文と英文の両方を作成する必要があります。普通の弁護士では、米国のグーグル社の謄本を取得するところでつまずくこともあるでしょう。最近も、間違ってグーグル株式会社(Google Inc.ではない別の会社)を訴えて敗訴したという事例も報道されています。
今回の仮処分命令が出たことにより、風評被害に苦しむ人々への救済の選択肢が一つ増えたことは間違いないでしょう。次なる課題は、このような裁判を手がけることのできる、ITに精通した弁護士の育成も重要だと思われます。