休憩時間でも賃金発生!? 〜労働時間の疑問、すべて答えます〜
2015年01月08日
Q.先日、知り合いの社長から、年に一度、従業員に受診させている健康診断の時間は労働時間ではないから賃金の支払い義務がないと聞いたのですが本当ですか?
A.年に一回定期的に行う健康診断は一般健康診断といい、一般的な健康確保を目的に行うものであって、業務の遂行との関連において行われるものではありません。したがって、受診の時間は労働時間には該当せず、賃金の支払い義務もありません。
賃金を支払うかどうかは就業規則の規定等によりますが、従業員の皆さんにきちんと健康診断を受診してもらうためにも賃金を支払うことが望ましいといえるでしょう。
尚、職場の健康診断には一般健康診断のほかに特殊健康診断というものがあります。こちらは特定の有害業務に従事する従業員に対して行うもので、業務遂行に関して従業員の健康確保のために当然に行う必要があるものですので、受診の時間は労働時間に該当し、賃金の支払いが必要です。
Q.当社は東京にありますが、取引先が日本国内の各地にあるため、従業員には地方へ出張に行ってもらうことがあります。
例えば、月曜日の朝から大阪で仕事がある場合には、前日の日曜日に大阪へ移動し、日曜日は大阪で宿泊してもらっています。このような場合には、大阪への移動時間は労働時間として賃金を支払う必要があるのでしょうか?
A.この点については、結論から申し上げると、移動時間は労働時間には該当せず、賃金を支払う必要はありません。
厚生労働省の通達では「出張中の休日はその日に旅行する等の場合であっても、旅行中における物品の監視等、別段の指示がある場合の外は休日労働として取扱わなくても差支えない」(昭23.3.17基発第461号)としています。
この場合の物品の監視とは、例えば商品を管理しながら移動する場合や現金を持っていく場合等のことです。
また、判例でも「出張中の移動時間については実労働時間ではなく、時間外手当が支払われなくても違法ではない」とされています。
もちろん賃金は支払う必要はありませんが、出張に伴う精神的・肉体的疲労に対する慰労として出張手当を支給している会社もあります。
以上、労働時間について詳しくみてきました。
就業規則等にも分かりやすく規定して、事業主の方だけでなく労働者の皆さんにもきちんと理解してもらうことをお勧めします。