経営戦略の策定に必要なものとは

2015年01月29日

前回分から読む
 

社長の仕事シリーズ(10)経営④

 

前回、管理運営とは「人と組織、資金を動かすこと」であると定義しました。
そして、これまでのコラムで紹介した「資金繰り」「事業承継」「リーダーシップ」は、人と組織、資金を動かすためにやるべき管理運営の一部であり、他にも「人財管理」「組織管理」「製品・サービス開発」など様々あるけれど、それらはすべて一貫性のある統制のとれたものでなければならないと説明しました。

 

更に、これらの活動を一貫性のある統制のとれたものにするためには、管理運営の根幹となる考え方として「経営理念」「経営目標」「経営戦略」があり、経営理念と経営目標について説明したところで前回は終わっています。

 

今回は「経営戦略」について話を進めていきます。

 

経営戦略は複数ある

経営戦略は、経営目標を達成するための大きな道筋を示すものです。経営目標を山の頂とすれば、そこに至る登山ルートが経営戦略に相当します。通常山頂に至るルートが複数あるように、とりうる経営戦略も一つではありません。
ではどのように数あるルートから最適を選ぶのでしょうか。あるいは最適のルートを作り出すのでしょうか。

 

古代中国の兵法家である孫子に「彼を知り、己を知れば、百戦して殆うからず」という有名な言葉があります。
戦をする際の心得として語られた言葉ですが、現代において経営戦略を策定する際に、この言葉がそのまま当てはまります。
「彼」とはまず敵国のことを指しますが、現代のビジネスの世界では競合他社にあたります。
また孫子の言う「彼」は単に敵国のことだけではなく、自国を取り巻く様々な外部環境を含んでいると解釈されており、ビジネスにおいては自社を取り巻く外部環境です。

 

つまり経営戦略を策定するには、競合他社をはじめとする外部環境を分析し良く知り、同時に自社の内部環境を分析し良く知ることから始めるのです。
そして内部・外部の環境分析をしたうえで経営戦略を策定することになります。

 

SWOT分析とは

経営戦略の策定に進む前に、外部環境と内部環境分析でよく使われる手法を紹介しましょう。

 

ご存知の方も多いのではないかと思いますが、それはSWOT分析という手法です。
SWOTは「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」それぞれの頭文字を取ったものです。
内部環境分析として自社の「強み」と「弱み」、外部環境として経営目標達成に有利に働く「機会」、逆に不利に働く「脅威」を把握します。

 

特に自社の強みをしっかり認識することが重要です。
例えば「強み」の具体的な例としては、「販売力に優れた社員がいる」、「他にはない加工技術を保有している」「長年取引のある固定客が多数いる」「潤沢な自己資金を持っている」「○○といえば△△といった定評を得ている」などです。弱みについては強みの裏返しですから例を挙げるまでもないでしょう。

 

次に「機会」と「脅威」を把握する外部環境は、マクロ的なものとして政治、経済、社会、技術など、ミクロ的なものとしては顧客(市場)、サプライヤー、競合、新規参入、代替品などが分析対象になります。
例えば政治的な機会や脅威として「新しい法律の施行」、経済面では「為替相場の変動」、社会面では「少子高齢化」等がすぐにでも思いつくものでしょう。

 

この分析を通して、自社の現状をしっかり把握すると同時に、強みを活かした経営目標を達成するための方向性を探っていくのです。
SWOT分析については、別の機会にもう少し詳しくご紹介することにして、次に進みましょう。

エバーグッド・コンサルティング 代表 中小企業診断士/認定経営革新等支援機関  首藤愼一 執筆者紹介

エバーグッド・コンサルティング 代表 中小企業診断士/認定経営革新等支援機関  首藤愼一

経営改善計画策定支援、経営革新計画策定支援、各種補助金(ものづくり、創業etc)の申請支援など、製造業から小売業まで業種を問わず「中小企業の元気に貢献する」を理念に活動しています。

首藤愼一先生のコラム一覧へ≫