万引き犯の顔写真の公開可否

2014年09月18日

まんだらけ

出典:まんだらけホームページ

小売り事業者にとって、万引きは常に頭の痛い問題です。
例えば原価1万円の商品を万引きされた場合、粗利1000円の品物を10個多く売らないと、その損害を回復することはできません。
また、一度万引きが行われると、万引き犯同士で「あの店はやりやすい」などの情報が伝わり、新たな対策がなされるまでの間、次々と被害に遭うという事態も生じます。
そこで、企業としては万引き防止のために防犯カメラを設置することも多いのですが、昨今、この防犯カメラの映像を企業が公開することの可否について議論が交わされました。

 

容疑者の指名手配は、古く江戸時代の「人相書」に遡ります。当然昔は写真もありませんでしたので、氏名・年齢・生国に続いて背格好や容貌、着物・所有品、しゃべり方の特徴などを言葉で列挙していく形式でした(脚注1)。現代に暮らす私としては、そんな情報だけで個人を特定できるのかと、疑問に思わなくもないのですが、この人相書きによって強盗犯がお縄になったという実例もあるらしいです。
その当時は、容疑者のプライバシーという議論は全くありませんでした。

 

現代になっても、未検挙の容疑者の顔写真の公開は、警察による指名手配として広く行われてきました。
また、テレビ局が特番などで公開捜査を行うということも、かなり以前から行われてきており(脚注2)、実際にテレビ特番を見た犯人が自首するという事例もありました。

 

このように、過去にも、犯人検挙の目的で、容疑者の顔写真を一般に公開するということはしばしば行われてきたのですが、いずれも警察などの捜査機関の捜査活動の一環として行われてきたものです。

コスモポリタン法律事務所 代表弁護士 高橋 喜一 執筆者紹介

コスモポリタン法律事務所 代表弁護士 高橋 喜一

外資系金融機関勤務を経て2008年弁護士登録。
10年以上の大企業勤務経験を踏まえ、中小企業の顧問業務に特化したリーガ ルサービスを提供。

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