選ばなかった選択肢によって失った利益を知る
2015年03月26日
損得学のススメの第7回です。今回は、「機会費用」と損得計算との関係について解説します。
機会費用とはなんでしょう?
みなさまご存知のとおり、二つ以上の選択肢から一つを選んだ時には、他の選択肢をあきらめることにならざるを得ません。
ここで言う機会費用とは、選ばなかった選択肢のうち最も大きな価値、得られたであろう利益のことを指します。
例えば、日給払いのバイトを1日休んで別に何かをした時、また、もらったお年玉を貯金せずにそのまま1年間タンスに入れておいた時、こうしたケースにおいて、1日分のバイト代や1年分の利息は、これらを選択しなかったことで得られなかった利益であり、機会費用となります。
「時は金なり」という言葉がありますが、これは機会費用を的確に言い表しています。無駄に時間を過ごす人は多く、それは大きな損をしているとも言えます。何も失っていないように思えますが、実は「有効に活用していれば、本来は得られていたものを得られなかった」という損失が発生しているのです。
ファイナンスの領域で投資プロジェクトの収益性を判断する場合、必ず期待キャッシュフローを資本の機会費用で割り引いて、現在価値ベースに計算して評価します。
これも、プロジェクトに金銭を投資することによって、金融市場で将来得られる期待収益を断念した部分を機会費用として捉えています。
さて、これまで6回にわたって紹介してきた損得学において、機会費用がどのように考慮されているのか、この点に関して例題を出しますので考えてみてください。
【例題】
凸凹テックの工場で従来から製造している主力製品に関する収益と費用の数値は、以下のとおりです。
売価 1,000円(1個あたり)
材料費・加工費500円(1個あたり)
固定費 30万円(1か月あたり)
販売個数 800個(1か月あたり)
ある時、得意先から特別注文がありました。その製品は特殊加工が必要なのですが、この注文に対応するためには、1か月間主力製品の生産を中止して特別注文仕様に対応しなければなりません。
特別注文に関する収益と費用に関する数値は以下のとおりです。
売価 2,000円(1個あたり)
材料費・加工費700円(1個あたり)
固定費 50万円(1か月あたり)
販売個数 1,000個(1か月あたり)
特別注文の販売単価は、2,000円と従来分より1,000円高いですが、注文を処理するため従来の設備に加えて月額使用料20万円の機械をレンタルする必要があります。
凸凹テックはこの特別注文を受けるべきでしょうか。