もう一度ちゃんと理解しておきたいコストの話

2015年04月13日

製造原価を考えるうえでの2つの要素

利益を決定する際に売上から差し引くべき売上原価は、次の数式で求めることができます。
 
売上原価(製造原価)= 製品1個当たりの製造コスト × 販売数量
 
実務ではもう少し込み入った計算をするのですが、簡略化するとこうなります。
 
そして、製品1個当たりの製造コスト(ここからは「製品原価」と呼びます)は、次の数式で決まります。
 
      製造の総費用
製品原価 = ――――――――
      製造の総数量

 
この式から製品原価は、分子と分母2つの要素から決まることがわかります。
 
つまり利益を大きくするためには製品原価を低くすればよいのですから、この2つの要素をそうなるように増減させればよいことになります。
どのように増減させればよいのでしょうか。
そう、分子の「製造の総費用」はできるだけ少なく、分母の「製造の総数量」はできるだけ大きくすれば、製品原価は小さくなります。
 
製品原価を決めるこの2つの要素ですが、「製造の総費用」はその「額」がポイントとなり、「製造の総数量」については「数量」がポイントとなります。
この点が製品原価を下げる様々な工夫をするうえでの違いを生みます。
 

製品の販売単価

今回このテーマでは、2つの要素ごとに話をもう少し掘り下げて、製品原価を下げるアイデアについてお話を進めたいと思うのですが、その前に一つ触れておくべきことがあります。
 
それは「製品の販売単価」です。利益は個々の製品の利益の積み重ねですから、販売単価をいくらにするかで利益の大きさも変わります。そして常に製品原価と対で考えておかねばなりません。
 
やはり営業至上主義の社長さんに多いのが、売上を伸ばすために安易に販売価格を値下げするケースです。しかもそれが原価割れになっているのかどうか、曖昧なまま値下げしているケースが少なくありません。
確かに値下げに応じることが経営戦略上必要な場合もあるでしょう。しかしその場合でも、その取引が利益にどれだけの影響を及ぼすのかを把握したうえで決断すべきであり、ただ売上欲しさに、利益については曖昧なままというのは感心できません。
 
会社の目的は利益を獲得することです。そのためには個々の製品原価と販売単価をしっかり把握しておくことが肝要です。特に製造業が販売価格や取引数量を合理的に決めていくには、製造原価計算をしっかり行うこと、データを活用した損益分岐点計算などを行うことが必要となります。
皆さんの会社は、原価計算をしっかり行っていますでしょうか。
 
少し脱線してしまいました。原価計算と損益分岐点計算については、また別途改めてお話をさせてください。
今回はここまでとし、次回は「コスト」に話を戻して、製品原価を下げることについてお話を進めていきたいと思います。

エバーグッド・コンサルティング 代表 中小企業診断士/認定経営革新等支援機関  首藤愼一 執筆者紹介

エバーグッド・コンサルティング 代表 中小企業診断士/認定経営革新等支援機関  首藤愼一

経営改善計画策定支援、経営革新計画策定支援、各種補助金(ものづくり、創業etc)の申請支援など、製造業から小売業まで業種を問わず「中小企業の元気に貢献する」を理念に活動しています。

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