交渉を有利に運ぶアンカリング効果って何?
2015年05月25日
〜ビジネスに役立つ行動経済学④〜
これまでに行動経済学の話として、何回かに分けてコンコルドの誤謬(埋没コスト)とフレーミング効果を紹介しました。いずれも物事の判断に影響を及ぼす、いわゆる心理的バイアスとして働く効果でした。
今回はそれらと同様な心理的バイアスである「アンカリング効果」についてお話をしたいと思います。
アンカリング(anchoring)とは、錨をおろすという意味です。
つまり、いったん錨をおろすとその綱の範囲でしか船が動けなくなるように、最初に印象に残った言葉や数字が、その後の行動を無意識のうちに縛ってしまう効果を言います。
身近にあるアンカリング効果
よくお店で見かける値札で、値引き前の値段に取消線を引き、値引き後の値段が書かれているものがあります。これが我々の身近にあるアンカリング効果の一例です。
表示された元の値段がアンカーとなって値引き後の値段に「お得感」を持ってしまいます。実際は値引き後でも割高な商品かもしれないのに、ついつい財布のひもを緩めてしまいがちです。
他にも「おひとり様5個まで」といった個数制限で店頭に並んでいる商品。この場合「5個」という数がアンカーとなって、本当は1個買えば十分なのについつい2個3個と買ってしまいます。
消費者にとってみれば、正しい判断を狂わせる心理的バイアスですが、お店にとってみれば販売促進の強い味方ということになりますね。
では次に、もう少しビジネスサイドのアンカリングの例を出しましょう。
価格交渉におけるアンカリング効果
皆さんの会社が新製品を開発し、いよいよ販売する段になりました。最初の値決めが重要になりますが、他に例のない画期的な製品なので、考えられる販売価格帯にはかなり幅があります。
開発にかかったコスト、製造コスト、販売促進コスト、流通コスト、そして稼得したい利益など考慮すると、安くても1個10,000円で販売したいところです。
さて、あなたは取引先にいくらで販売価格を提示しますか。