起業へ踏み出すこと
2015年06月26日
起業をめぐる最近の状況
2014年の中小企業白書によると、中小企業・小規模事業者の数は年々減少し続けているそうです。これは経済や社会の構造変化、経営者の高齢化の進展などに伴う現象であることは明らかです。そしてその一方で、起業を希望する者の数も減り続けているとしています。つまり日本においては産業の新陳代謝が停滞し続けているということなのです。
こういう状況を踏まえて政府としては、新たな地域経済の担い手を創出し新陳代謝を図るべく、新規起業の促進に力を入れ始めています。例えば各地の商工会や商工会議所等への起業(創業)スクール事業の委託、起業者向けの補助金制度、政府系金融機関による各種融資制度、信用保証協会による起業(創業)関連保証、起業間もない会社への投資を促進するための投資家への優遇税制(エンジェル税制)などです。
政府もアベノミクス第三の矢を飛ばすべく本腰を入れていると言ってよいでしょう。つまり、これからビジネスを興そうとする人にとって背中を押してくれる追い風が吹いているといってよいといえます。
一歩踏み出す難しさ
環境は起業希望者に追い風と言っても、起業はそうたやすく出来ることではありませんね。実際に開業に要する手続き、時間、コストを総合的に評価した起業環境の国際比較によると、日本は120位と低く、まだまだ環境を整えていく余地が大きいと言えます。
そして日本人の国民性でもあるのかもしれませんが、変化よりも安定、リスクよりも安全を志向する心理的な側面も、起業件数が伸びない理由の一つと思えます。
この点については前出の中小企業白書の調査「起業を将来の選択肢として考えている者が起業準備に踏み切らない理由」が参考になります。上位5つまで紹介しましょう。
1位:収入、やりがい、プライベートの面で現状に満足している。
2位:事業失敗時のリスクを考えると、起業の準備に踏み出せない。
3位:起業後の収入に不安があり、起業の準備に踏み出せない。
4位:周囲に自営業者や起業者がいないので、「起業」することに現実味がない。
5位:自身の経営者としての資質・能力に不安があり、起業の準備に踏み出せない。
いかがですか、5つのうち4つが安定・安全志向の心理的理由です。日本においては起業環境の未整備以外にも心理的側面の影響が見過ごせないようです。
自分自身の背中を押す
起業環境の整備は今後ますますお国に頑張ってもらうとして、ここでは心理的側面について考えてみましょう。
自分のアイデアを事業化したい、自分の裁量で仕事がしたい、年齢や性別に関係なく仕事がしたい、自分の特技を生かして儲けたい等々は、実際に起業した人の動機です。そして多くの起業を希望する人たちも同じような思いを持っています。
しかし起業への同じ思いを持ちながら、ある者は事業を興し事業主・経営者となり、ある者は起業希望者のままで終わる。この結果の違いは何によって生まれるのでしょうか。それは実にシンプルなことです、そう「起業への思いの強さ」です。つまり安定・安全志向という心理的抑制を押しのけ起業へと向かう、自分自身の背中を押す力の強さで決まるのです。