起業を考えたら注意したいこと ~個人事業主・会計・税務編~

2015年06月30日

2)税務署に届出書を出すのを忘れがち

新たに事業を始めたときは、税務署への届出がいくつか必要になりますが、そのこと自体を全く知らなかったという人が結構います。

 

税目 届出書等 内容 提出期限等
所得税 個人事業の開廃業等届出書 事業を開始した場合

事業所等を開設等した場合

事業を廃止した場合

事業開始等の日から1か月以内
所得税の青色申告承認申請書 青色申告の承認を受ける場合(青色申告の場合には各種の特典があります。) 原則、承認を受けようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した場合には、開業の日から2か月以内)
青色事業専従者給与に関する届出書 青色事業専従者給与額を必要経費に算入する場合 青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後開業した場合や新たに事業専従者を有することとなった場合には、その日から2か月以内) また、青色事業専従者給与の額等を変更する場合には、遅滞なく
所得税(消費税)の納税地の変更に関する届出書 住所地に代えて事業所等の所在地等を納税地とする場合(それぞれの税務署に提出します。) 随時(提出した日後における納税地は事業所等の所在地になります。)
所得税の棚卸資産の評価方法減価償却資産の償却方法の届出書 棚卸資産の評価方法及び減価償却資産の償却方法を選定する場合 棚卸資産

事業を開始した場合

事業を開始した後、新たに他の種類の事業を開始した場合又は事業の種類を変更した場合

減価償却資産

事業を開始した場合

既に取得している減価償却資産と異なる種類の減価償却資産を取得した場合

従来の償却方法と異なる償却方法を選定する事業所を設けた場合

からまでの事由が生じた日の属する年分の確定申告期限まで

源泉所得税 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 給与等の支払を行う事務所等を開設、移転又は廃止した場合(「個人事業の開廃業等届出書」を提出する場合を除きます。) 開設の日から1か月以内
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 給与の支給人員が常時10人未満である給与等の支払者が、給与等から源泉徴収した所得税の納期について年2回にまとめて納付するという特例の適用を受ける場合 随時(申請書を提出した月の翌月末までに通知がなければ、申請の翌々月の納付分からこの特例が適用されます。)
消費税 消費税課税事業者選択届出書 免税事業者が課税事業者になることを選択する場合 選択しようとする課税期間が事業を開始した日の属する課税期間等である場合には、その適用を受けようとする課税期間中
消費税課税期間特例選択届出書 課税期間の短縮を選択する場合 選択しようとする課税期間が事業を開始した日の属する課税期間等である場合には、その適用を受けようとする課税期間中
消費税簡易課税制度選択届出書 簡易課税制度を選択する場合 選択しようとする課税期間が事業を開始した日の属する課税期間等である場合には、その適用を受けようとする課税期間中

(国税庁HPよりhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2090.htm

 

「個人事業の開廃業等届出書」と「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」は開業・開設したら無条件に提出しなければならないものですが、なかには特典を受けるためには出しておかないといけないものがあります。

    ① 青色申告をしたい場合
    ② 誰かを雇う場合
    ③ 事業開始早々、大きな設備投資をする場合 です。

 

① 青色申告の特典については以前のビジネスエッセンス「青色申告のいろいろな特典をみてみよう!をご参照ください。

 

開業から2ヶ月以内に「所得税の青色申告承認申請書」を提出しておかないと初年度は白色申告になってしまい、仮に赤字になってもその損失を翌年の所得から差し引くことができなくなります。

 

② 誰かを雇う場合

誰かを雇って給料を支給する際、所得税を源泉徴収します。その預かった所得税は翌月10日までに税務署に納付しなければならないのですが、もし給与の支給人員が常時10人未満であれば毎月納付するのではなく、年に2回の納付で済むという方法があります。毎月納付するのは大変という方にお勧めなのですが、この制度を利用する場合は「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出しなければなりません。
 
もっともこの制度は従業員を雇ってすぐに申請書を提出しても適用できるのは翌々月分からですので、最低でも2か月分は毎月提出する必要があります。

 

また、生計を一にする親族が青色申告者の事業に専従する場合で給与を支払う場合は、2ヶ月以内に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出しなければその支払った給与を必要経費に算入することができません。
 
③ 事業開始早々、大きな設備投資をする場合

個人事業の場合は事業開始年は消費税は免税となりますが、大きな設備投資をする場合は課税事業者になることを選択した方が有利になるケースもあります。
 
その場合はその年中に「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要があります。

岩嵜・杉原合同事務所 税理士 杉原麻友子 執筆者紹介

岩嵜・杉原合同事務所 税理士 杉原麻友子

平成21年7月開業。
著書「団塊世代サラリーマンのための定年退職マニュアル 厚生年金・雇用保険・健康保険の手続きと確定申告がわかる本」(共著)(税務研究会)
ホームページ http://sugihara-accounting.com/
ブログ(大阪の女性税理士sugiの天満橋日記) http://ameblo.jp/sugihara-accounting/

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