個人事業主は家族の健康保険の被扶養者になれる?
2015年08月07日
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前回のコラムでは、起業後の社会保険や労働保険の手続きについてご説明いたしました。
その後、以下のようなご質問をいただきましたので、ご質問の内容とそれに対する回答をご紹介いたします。
Q.私は勤めていた会社を退職し、先日、個人事業主として起業しましたが、まだ起業したばかりで売上もそれほどない状態です。個人事業を開始した場合には、国民健康保険と国民年金に加入するとのことですが、私のように売上が少ない場合でもそうなのでしょうか? 夫の健康保険の被扶養者になり、国民年金は第3号被保険者になることはできないのでしょうか?
A.個人事業主として起業されたばかりでまだそれほど売上が多くないということで、ご主人の扶養に入りたいのですね。まずは全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合の被扶養者の認定基準について確認してみたいと思います。
≪被扶養者の認定基準≫
被保険者(ご質問の場合にはご質問者のご主人です)により主として生計を維持されていること及び以下のいずれにも該当する場合に被扶養者として認定されます。
1.収入要件
年間収入130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は180万円未満)かつ同居している場合には収入が被保険者の収入の半分未満、別居の場合には収入が被保険者からの仕送り額未満
2.同一世帯の条件
配偶者、直系尊属、子、孫、弟妹以外の3親等内の親族は同一世帯であること
ここでは年間収入130万円の意味が問題になってきます。
給与所得者の場合には、通勤手当も含めた総収入金額(給与所得控除前の金額)で判断することになりますが、個人事業主の場合には、売上総額から次の最低限度の必要経費を控除した後の金額で判断することとされています。
・原材料費又は仕入れ価格
・原材料の運搬費又は仕入れた商品の運搬費
・人件費(他人を雇用した場合のみ)
上記以外の通信費、宣伝広告費、接待交際費等は控除できる経費からは除外されます。
協会けんぽの場合には、個人事業主を健康保険の被扶養者にするには、被扶養者(異動)届に原則として直近の確定申告書の写しを添付して手続きをします。
尚、協会けんぽについては上記のとおりですが、ご主人が健康保険組合に加入されている場合には、組合ごとに被扶養者の認定についての取扱いも異なりますので注意が必要です。
健康保険組合によっては、個人事業主の場合には収入にかかわらず被扶養者として認めない組合もあったり、また被扶養者として認める場合であっても必要経費の控除前の売上が年間130万円未満であることを要件としている組合もありますので、加入されている健康保険組合にご確認いただく必要があります。
国民年金については、健康保険が協会けんぽであっても、健康保険組合であっても、被扶養者として認定されている配偶者(20歳以上60歳未満)の場合には第3号被保険者となります。
以上のとおり、個人事業主が健康保険の被扶養者に該当するかどうかの判断は、保険者(協会けんぽや健康保険組合)により取扱いが異なり分かりづらいと思いますが、せっかく起業された事業を一日も早く軌道に乗せるためにも、起業当初はご家族の支えも受けながら事業発展のために頑張っていけるといいですね。