いわゆる『年収106万円の壁』について
2016年02月08日
最近、「106万円の壁」という言葉をよく耳にします。
これは、平成28年10月より一定の要件を満たす短時間労働者(パートタイマー)の社会保険への適用基準が拡大されることによるものです。
この改正は、非正規労働者に被用者保険を適用し、セーフティーネットを強化することで、社会保険における格差を是正する、また、社会保険制度における、働かない方が有利になる仕組みを除去することで、女性の就業意欲を促進して、今後の人口減少社会に備えるなどの意味合いを持って成立されたものです。
以下、改正内容をご説明したいと思います。
◆適用基準どのように変わる?
<現行>
パート労働者は、正社員の労働時間の4分の3(所定労働時間40時間の場合は30時間)に満たないと社会保険に加入できない。
年収130万円超のパート労働者は、配偶者の扶養を外れ、社会保険料を自己負担する。
<改正後>
一定の要件(別途記載)を満たすパート労働者は、社会保険への加入が義務付けられる。
=配偶者の扶養を外れ、社会保険料を自己負担する。
◆一定の要件とは?
①週の所定労働時間が20時間以上ある。
②月額賃金が8.8万円(年収106万円)以上である。
③勤務期間が1年以上見込まれること。
④学生は適用対象外とする。
⑤従業員 501人以上の企業を強制適用対象とする。
(適用拡大前の基準で適用対象となる労働者の数で行う)
◆自分で社会保険に加入するメリット、デメリット
<メリット>
①健康保険
・傷病手当金を受け取ることができる(仕事を休んだ場合、おおよそ日給の3分の2が支給)
②厚生年金
・会社が保険料の半額を負担
・将来受け取る公的年金額が増える(現行65歳以上より支給)
<デメリット>
健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料(45歳以上65歳未満の方対象)の自己負担額が月々の収入より減額されるため、手取り額が減ってしまう。
これらのことから、要件を満たすパート労働者が増えることにより企業側の費用負担(社会保険料半額負担)も増加することとなります。
よって、企業の負担を増やさないようにするためには、従業員の人数に気をつけるなど一定の要件に対処するほか、パート従業員に対しても社会保険への加入に伴うメリット、デメリット等をきちんと説明し、手取り額を優先するか(手取りを維持するために現状より余計に働くか、年収を106万円未満に調整し社会保険に加入しない)、働きがいや将来の収入増を目指すか、今後の働き方をしっかりと考えてもらう必要があるでしょう。
また、今回の改正は大企業が対象となっていますが、政府は3年以内に検討し、中小企業にも拡大する方針です。
社会保険料は労使折半であることから企業の負担は増大していくこととなるため、政府はキャリアアップ助成金の拡充等の対策を始める予定です。そちらの動向についても注視しながら、10月に備えて対策を進めていくと良いでしょう。
キャリアアップ助成金については、改正内容が確定しましたら、改めてご説明をさせていただきます。