運転資金の肥大化を防ぐ
2014年09月29日
運転資金肥大化は死に至る病
では望ましくない増加にはどんなものがあるでしょう。それは売上が回収され資金(現金)となるまでの期間が延びることで生じる運転資金の肥大化です。
具体的な例としては、売掛金や受取手形の条件の延長があります。得意先から要求され、長い付き合いだからと了解してしまう、なんていうことはありませんか? 1ヶ月サイトが伸びれば1ヶ月分の運転資金が必要になります。それを借入金で賄えば金利負担が増えてしまいます。また条件の延長を求めてくる得意先は、資金繰りが悪化している可能性が高く、貸し倒れのリスクも高いと見るべきです。
これが、運転資金肥大化のリスクのひとつです。こういった得意先の要請に対して冷静に対応し、運転資金の肥大化を防止することも大切な「社長の資金繰り」です。
売上の回収期間が伸びてしまい運転資金の肥大化が起こる例をもうひとつ挙げましょう。実は本当に怖いのはこちらなのです。それは原材料在庫や製商品在庫の増大です。
先の例で示した売掛金の条件延長のケースでは、確かに運転資金の肥大化を招きますが、貸し倒れしない限りいずれ回収は可能です。しかし在庫の増大は、半永久的に回収不能となる可能性を秘めています。いわゆる不良在庫とか不動在庫と呼ばれるものです。その分は経常運転資金を超過する回収不能な運転資金となり、借入金で賄うとすれば、その返済には他の製品や商品の売り上げから得られた資金の純増部分を充てるしかなくなるのです。しかしそれも限界があります。そうなると借入金を返済するために借入をするという悪循環に陥ることになります。この不良資金のことを「減債反復資金」と言います。
銀行は経常運転資金や増加運転資金については快く融資してくれますが、この減債反復資金については融資を渋ります。この状態が進行すると、利益が出て儲かっていても、一向に資金繰りが良くならない、苦しくなる一方となります。何か不測の事態(例えば貸し倒れ)が起きて緊急の融資が必要となっても、銀行から資金調達できない可能性が極めて高くなります。不良在庫の増大による運転資金の肥大化は、まさに死に至る病と言えるのです。
商品仕入担当者は、大量に仕入れると仕入原価が安くなるので、商品を大量に仕入れます。仕入原価が安いので、当然売れた分についてはいつもより利益が出て、担当者は鼻高々。しかし売れ残りもたくさん出てしまいました。
世の中で流行っている売れ筋の商品を、自社でも扱おうと大量に仕入れたのに、流行は意外と速く過ぎ去ってしまったということもあります。売れた分は利益が出ましたが、大量の在庫が残ってしまいました。売れ残った在庫を、思い切って値引きしてでも売り切ればまだましですが、いつか売れるかもしれないと取っておくことになったとしたら・・・。こうして不良在庫は積み上がっていきます。
この不良在庫はじわじわと会社の資金の流れを悪化させます。そしてある日、支払い資金が手当てできずに倒産に至るのです。毎期黒字計上していたのに・・・・。いわゆる黒字倒産です。
こうならないために、社長は常日頃から棚卸資産の在庫高には注意を向けておかねばなりません。目先の利益にとらわれず、売れるだけ仕入れる。仕入れたら売り切る努力をする。原材料も必要な量だけ仕入れて売れるだけ生産する。そして売り切る努力をする。
いわゆる在庫を増やさない努力、これには社長の強い決意と指導力が必要です。まさに「資金繰り」は「社長の仕事」なのです。