50万円値引いても受注した方が得?
2014年10月06日
設備と人手に余裕がなく、製品1kgあたり2.5万円の特別注文を受けてしまうことで、1kgあたり3万円の通常注文の生産が出来なくなる場合です(混乱しないよう費用は同額とします)。
◎ 第1原則は、特別注文を受ける場合と断る場合(通常生産を優先する)で比較します。
◎ 第2原則 ⇒ 比較の対象の間で、お金の流れに着目して収益の違いと費用の違いをそれぞれ総額でとらえる
<収益の違い> 受ける場合250万円、断る場合300万円 相違分▲50万円
<費用の違い> 受ける場合150万円、断る場合150万円 相違分 0 円
<利益の違い> 受ける場合100万円、断る場合150万円 相違分▲50万円
利益の相違分が50万円になるので、特別注文を断った方が50万円の利益が出ることになります。
これらのケースから、営業担当者にとっては、生産の現場を把握した上で、「暇」か「忙しい」か、といった基準をもとに事前に売価を決めておいた方が、注文を受けるかどうかの意思決定の判断に活用できて便利だということがわかります。
製造業が直面する課題、生産リードタイムの短縮や適正な在庫水準を実現するためには、受注時において速やかで正確な意思決定が求められるのではないでしょうか。
なお、今回は、費用を同額としていますが、忙しい場合には、残業したり、アルバイトを雇ったりして注文に対応することになります。利益を生み出す費用の上限を把握しておくことも必要になります。
改めて、特別注文への対応にあたっては、会社としての売価基準を明確にし、生産と販売それぞれが情報を共有していくことが重要だということを理解していただけるのではないでしょうか。
費用というと、会計を勉強された方は、減価償却費が思い浮かぶと思います。
機械などの設備投資を行うと、費用負担が一度に生じる一方で、生産効率化といった効果は長期間にわたり継続的に続くものです。
そこで、財務会計では、減価償却として、投資額を効果が生じる期間(=耐用年数)に応じて各期に費用として配分することとしています。
これは、適正な期間損益計算として、税法においても定額法や定率法といった減価償却方法が認められています。
損得判断にあたっては、減価償却を無視します。毎期計上する減価償却費は、現金としての支出はなく、みなし計算により、各期に割り振る費用だからです。
つまり、損得学においては、比較の対象において発生したお金の流れのみに着目し、既に支払った費用については、予め計算から除いているのです。
このほか、減価償却と同様に現金の支出を伴わない棚卸資産の評価損益なども損得判断においては、無視します。
今回の解説はここまでです。
次回は、費用について「固定費」と「変動費」に分けて損得の判断を行ってみたいと思います。