事業を未来に向けて引き継いでいくために
2014年10月23日
どうやって「見える化し共有」するのか
「事業の見える化と共有」と言うのは簡単ですが、実際やろうとすると何をどうすればよいか戸惑うかもしれません。先に述べた事業承継の最終工程であれば、専門家にお任せすればよいのですが、こればかりは社長が頑張らなくてはいけません。
とはいえ、ただ頑張ってくださいだけでは申し訳ないので、こうしてはどうですかという提案をしましょう。
経営革新に取り組んでみる
いわゆる中小企業庁が提供する経営革新支援を利用してみましょうという提案です。
この制度は経営革新計画を作成し申請して承認されると、政府系金融機関による低利融資制度、信用保証の特例、各種税制措置等が利用できるというものです。この経営革新計画を策定するためには自社の徹底的分析が必要になります。そして、この自社の徹底的な分析が「事業の見える化」をすることにつながるので、経営革新計画書の承認を取得するついでに「事業の見える化」をしてしまいましょうという提案です。
またその際、後継者候補も社長と一緒に経営革新計画書の作成に参画すれば、「共有」も同時にかつ効果的にできてしまいます。
そして計画策定にあたっては国が指定するアドバイザー(認定支援機関)などのサポートが得られますので、社長一人が思い悩む苦労も少しは軽減できるというメリットもあります。この際の重要なポイントは、後継者候補とできるだけ共同作業で計画書策定に取り組むことです。一つのものを共に完成させるという行動は社長と後継者候補との距離をぐっと近くすることでしょう。
経営革新計画書の承認申請についてはこちらのリンクを参照してください。
中小企業庁HP:経営サポート「経営革新支援」
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/index.html
知的資産経営報告書の作成に取り組んでみる
こちらは経済産業省が提唱しているもので、中小企業の事業収益や企業価値を持続的に高める方法を見つけるためのマネジメントツールです。知的資産とは企業が保有する無形の経営資源の総称で、「事業の見える化」により明確にすべきものとほぼ一致します。経営革新計画書のように公的な措置を受けられるというものではありませんが、その作成過程においては、経営革新計画書よりもさらに深く自社を分析することになりますので、後継者候補の会社に対する理解もより深いものになります。こちらも社長と後継者候補との共同作業で作成することで効果を最大化します。
また、作成した知的資産経営報告書は、金融機関への融資申し込みの資料として、得意先への会社説明のツールとして、人財採用のツールとして、社内での社員教育の教材として等、様々な使い道があります。
作成を支援する団体等については以下のリンクを参照してください。
経済産業省HP:支援団体・リンク
http://www.meti.go.jp/policy/intellectual_assets/link.html
以上2つほど「事業の見える化と共有」のための提案をご紹介しました。ぜひ参考にしていただければと思います。
事業承継については「事業の見える化と共有」以外にもやらねばならないことがあります。
これだけやればすべて大丈夫というわけではありません。ただ、他をすべて整えても後継者候補がその気にならなければすべては無に帰するといっても過言ではないわけですから、やはりこれが一番のポイントではないでしょうか。
ぜひ取り組まれることをお勧めして、この項は終わりとします。