ビジネスに役立つ行動経済学
2014年11月03日
コンコルドの誤謬
あなたが社長を務める会社はある画期的な製品を開発しています。すでに開発費として4億円を使い、製品化までにあと5千万円が必要です。ところが、その開発中の製品よりもはるかに性能の良い同種の製品が同業者から発売されてしまいました。しかも当社が予定している発売価格よりはるかに安いことも分かっています。
ここで質問です。あなたは、残りの5千万を投資してこの製品を完成させますか?
行動経済学では、こういう質問を実際に多くの人に答えてもらい、そこから人間の感情と意思決定、そして行動の関係を研究します。
実際にこのような質問をされた人の85%は「イエス」と答えたそうです。ここまで時間と金をかけておいて、今更止められるかという感情がそのような意思決定をさせているのは明らかです。
一方で、今まで投資した金額をゼロとして同じ質問をした場合、つまり同業者の製品より明らかに劣る製品をつくるために5千万を投資しますかという質問に「イエス」と答えた人は激減したそうです。いわゆる損得で冷静に考えれば、開発中止が妥当な判断というわけなのに、すでに投資した4億円が判断に大きく影響しているのです。人は得することより損することをより嫌う傾向があるそうです。そんな感情が損失の確定を先延ばしにしてしまうのです。
このような人の行動を「コンコルドの誤謬」と行動経済学では言うそうです。コンコルドはご存知ですね。かつて英仏で共同開発を進め巨額の赤字を出した超音速旅客機のことです。コンコルドは開発の途中で「仮に就航させてもいろいろな理由で黒字化は困難」と判断されたにもかかわらず、それまでに巨額の投資をしていたために開発を止めることができず、結局さらに大きな赤字を上乗せしてしまったことで有名です。
上記のような事例は身の回りにもありそうですね。まあ日常の些細なことであれば、感情に任せても大過ないでしょう。しかしビジネスにおける意思決定では、気をつけるべき話だとは思いませんか。行動経済学では様々なケースを取り上げて、人間が陥りやすい感情と行動を分析しています。
そこにはビジネスに役立つものも多く含まれています。
いくつも書籍が出版されていますので、読みやすそうなものを見つけて一読されることをお勧めします。