生成系AIの大きな課題

2024年04月01日

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「生成系AIの大きな課題」
 
ほんの数年前まで実験段階であった生成系AIは、
現在においてその技術を使ったサービスやプロダクトが生活の隅々まで入り込んでいます。
あまりの成長の早さに様々な軋みも生まれているのも見逃せない事実です。
 
少し前、声優や俳優らが所属する日本俳優連合があるメッセージを発しました。
それはAI技術のツールを使って、声優や俳優の声を素材に用い「アニメのキャラクターを使って○○を歌ってみた」などという、二次創作系の動画がTikTokやYouTubeに投稿されていることに関して、『努力の盗用』だとし著作権の侵害を訴えているのです。
一方昨年ハリウッドでは俳優たちが大々的なストライキを行いました。
その主張には色々な要素が含まれていますが、その一つにAI技術の利用抑制を訴えていました。
どういった事なのでしょうか。
声や演技をAIで修正したり、複製したりすることに関して本人の同意や正当な対価を求めていたのです。
例を挙げるとすれば、エキストラ俳優など1日だけ契約して撮影し、それらを素材に用いAIで加工して膨大なシチュエーションを作ることが出来るのです。
この二つの例はインプットとアウトプットの実例として象徴的です。
 
AIには大きく2つのフェースが存在します。
それは情報をインプットする「学習フェーズ」と生成物をアウトプットする「利用フェーズ」です。
「学習フェーズ」では、AIには大量の情報を学習させる必要があります。
その元データの著作権はどのように取り扱うのでしょうか・・・
一方「利用フェーズ」では、生成されたAI生成物の著作権はどうなるのかと言う点です。
 
法整備の観点から言うと日本、EU、アメリカでは微妙に取り扱いが違っています。
法整備に関して難しい点は国境をまたいで情報が行き来してしまうことです。
学習情報収集の無国籍化、サービスの展開地としての無国籍化が課題となっています。
「学習フェーズ」に関しては、実際日本では著作権法30条の4においてデータ収集には大幅な自由が与えられ、写真、動画、小説、論文等なんでもデータの所在国すら関係なく利用することが認められています。
(※ただし利用地域は日本国内限定)
一方EUでは営利目的に関して著作権者がAI学習利用を禁止している場合、原則的に著作権侵害に当たります。
アメリカではフェアユースをベースにより個別判断となっています。
一方「利用フェーズ」では日本やアメリカ等は人間の創作的関与が無い場合は著作物としては認めていませんが、イギリスに関して言えばAIが生成したとしても著作権を認めています。
 
このように生成系AIのテクノロジー進化が急速であり、またデータが容易に国境を越えてしまうため、今後多様な課題が顕在化してくるであろうことは疑いようがありません。
長い時間や経験則、発想、啓示など人間の創造力から生み出された「表現物」の根幹が揺らいでいます。
1936年に発表されたヴァルター・ベンヤミンによる「複製技術時代の芸術作品」では、
当時浸透し始めた写真や映画などの機械的複製技術が考察されていますが、デジタルな現代においてはオリジナルそのものが複製され、表現物は任意に切り取られたり、その断片がほぼ無限と言って良いほど蓄積されることが可能な社会です。
生成系AIがもたらす「未来」はまだ始まったばかりです。
 
参考資料
知的財産推進計画2023 知的財産戦略本部
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku_kouteihyo2023.pdf