1-1 経理の概要
(3)決算業務
みなさんも、決算という言葉を聞いたことがあると思います。上記⑨の決算業務について少し説明を加えておきます。
経理の主な仕事内容は、日次や月次等その作業を行う時期が定まっている定形業務と、その要望があるときに行う、随時業務とに分類できます。
定形業務の中でも、通常年1回行うものに決算業務があります。会社は、半永久的に継続することを前提としていますが、一定期間ごとにその経営活動の結果をまとめることとなっています。その期間のことを事業年度(会計期間)といい、通常1年になっています。
会社は、その事業年度(1年間)の売上・仕入・経費等の取引を集計して、経営の成績結果である決算書を作成することになっています。これを決算業務と言います。
決算書とは、貸借対照表と損益計算書が主なものです。貸借対照表は、その事業年度末日の財産の内容を集計した表です。これに対して損益計算書は、その事業年度にどれくらい利益をあげたかを集計した表です。
また、決算書等の資料は、経営分析等を行い会社経営の将来に役立てることとなります。
(4)会社の規模・業種による経理業務の違い
会社における経理業務の基本は、何ら変わりはありませんが、会社の規模・業種により多少異なります。
①規模による違い
会社の規模は、従業員が数名から数千人までさまざまです。その中で従業員が数千名規模の大きい会社では、経理部もその仕事内容により課・係等に細かく分かれています。具体的には、売掛金入金管理、買掛金支払管理、日々の現金の管理、資金管理(財務担当)というように役割が細分化されています。業務によって担当者が専業化しているために、各担当者が会社の全体像を把握することは困難です。
従業員数名で運営する規模の小さい会社では、通常経理が1人であることが多いと思います。このため1人で現金管理・売上及び仕入管理・資金管理等全ての経理業務を行わなければなりません。規模の小さい会社では、1人の経理担当者が業務の全てを行いますから、その担当者は会社の全体像を把握することができます。
②業種による違い
会社にはさまざまな業種がありますが、その業種の違いにより経理業務も多少異なることがあります。具体的に、商品を販売する販売業の会社と、製品を製造する製造業とビルを建築する建設業、そしてサービス業を比較してみましょう。
A.販売業
販売業の会社では、商品の売上・仕入管理に関する経理の比重が他の2つの業種に比較して高いため、商品有高帳等による在庫管理が重要です。
販売業の主な決算書は、貸借対照表・損益計算書の2つです。
B.製造業
製造業の会社では、通常の売上・仕入の他に、製品を製造する部門が存在します。そのため、製品の原価を計算する原価管理業務が必要となってきます。製造業の主な決算書は、貸借対照表・損益計算書の他に、製品の原価を集計した製造原価報告書の3つとなります。
C.建設業
建設業は、ある意味で建築物を製造する製造業であるとみることができますが、その工事による建築物ごとの個別原価管理業務が必要となってきます。建設業の主な決算書は、貸借対照表・損益計算書の他に、建築物の工事原価を集計した工事原価報告書の3つとなります。
D.サービス業
サービス業は、その種類が多岐にわたり非常に把握しづらい部分がありますが、共通して管理が必要になるのが、サービスに対する外注費を始めとするコストの集計になります。どのようなサービス提供にもコストがかかってきます。そのため個別原価の計算が必要になるのです。決算書としては、貸借対照表と損益計算書の2つですが、社内管理表として、部門別もしくは受注別の損益計算書が必要になります。