4-4 棚卸
棚卸方法
売上原価を計算する上で必要な棚卸の方法には、「実地棚卸法」と「継続記録法」の2 つの方法があります。
(1)実地棚卸法
実地棚卸法とは、棚卸資産の種類・数量・単価等を調べて実際の有高を調査する方法です。
この実地棚卸には棚卸表を用いて、期末の実際の数量を確認します。その棚卸表には、商品の種類・数量・単価等を記入することになります。
(2)継続記録法
継続記録法とは、商品受払帳等の帳簿記録を基に売上数量と期末数量を算出する方法です。この期末数量は、あくまでも帳簿上の数となります。
帳簿の記載方法等は、前記「4-3 商品受払帳」を参照して下さい。
棚卸減耗費と棚卸評価損
(1)棚卸減耗費
通常、会社では、棚卸方法として、実地棚卸法と継続記録法を併用します。しかし、実地棚卸法による実地棚卸高と継続記録法による帳簿棚卸高に差異が生じることがあります。これは、廃棄・破損・盗難等により帳簿棚卸高より実地棚卸高が少ないことが多いと思います。この場合、その不足分を「棚卸減耗費」といいます。
実地棚卸高の方が多い場合には、商品の種類違いや記入漏れの恐れがありますのでもう一度見直して下さい。
(2)棚卸評価損
棚卸資産を棚卸していくうちに、保存状態や破損による変形・季節ハズレ・流行遅れ等いろいろな理由により、仕入時の単価より価値が下がることがあります。この下がることによる損失を「棚卸評価損」といいます。
棚卸資産の評価方法
製品・商品の購入単価がいつも同じとは限りません。まして、期末に残っている棚卸資産の単価がどのものなのかという特定はできません。できたとしても、大変な手間がかかります。このため棚卸資産の評価方法を規定し、この問題を解決します。この期末棚卸資産の評価方法には、8 つの方法があります。通常の中小企業の多くは、「最終仕入外科法」で評価しています。
(1)先入先出法
先入先出法とは、先に仕入れたものから先に払い出されたと仮定して、期末棚卸資産を評価する方法です。つまり、期末には、最近に取得したものが残っているものとして棚卸資産を評価します。
(2)後入先出法
後入先出法とは、後に仕入れたものから先に払い出されたと仮定して、期末棚卸資産を評価する方法です。つまり、期末には、古いものから残っているものとして棚卸資産を評価します。
(3)総平均法
総平均法とは、期首棚卸高と期中仕入高の合計額を期首棚卸数量と期中仕入数量の合計額で除して総平均単価を求めて、この単価に期末棚卸数量を乗じて棚卸資産を評価する方法です。
(4)移動平均法
移動平均法とは、仕入の都度、在庫の金額と仕入金額を合計して、在庫数量と仕入数量との合計数量で除し加重平均単価を求めて、この単価に期末棚卸数量を乗じて棚卸資産を評価する方法です。
(5)単純平均法
単純平均法とは、異なる購入単価を合計し、その異なる単価の数で除し平均単価を求めて、この単価に期末棚卸数量を乗じて棚卸資産を評価する方法です。
但し、現実問題として購入数量の多いもの、少ないものを同一に扱うため、正確性に欠ける点からほとんど使われていません。
(6)個別法
個別法とは、個々の取得価額で期末棚卸資産を評価する方法です。この方法は、売上と原価が個別対応できる場合に限られます。
(7)売価還元法
売価還元法とは、期首棚卸高と期中仕入高の合計額を期中売上金額と期末棚卸資産の売価金額の合計額で除して原価率を求めて、期末棚卸資産の売価にこの原価率を乗じて棚卸資産を評価する方法です。この方法は、期末棚卸資産を個々に売価管理しなければならず、あまり使われていません。
(8)最終仕入原価法
最終仕入原価法とは、最終の購入単価に期末棚卸数量を乗じて棚卸資産を評価する方法です。この方法は、購入単価の違いを考慮していないため、正確性に欠けますが、単価の設定が簡単ですし、税法上の法定評価方法となっていますので、この方法により評価する会社が多いようです。
※ 低価法
低価法とは、上記の8 つの原価方法により評価した期末棚卸資産の評価額と期末時価のいずれか低い価額で評価する方法です。